あとがき

 ある高校の先生がおっしゃっていた言葉です。
 「私は、卒業生におめでとうと言うとき、その子を債務者として送り出していることに、とても胸が痛む思いがします」
 将来に夢を持ち、「学びたい」と思う純粋な気持ちは、若者にとって何よりも大切なものであるはずです。

 その学びのために信頼して利用した奨学金が、奨学金とは名ばかりの学資ローンと化し、その後の人生の大きな負担となってその人を苦しめ、気力や体力を奪い、人生の選択肢を奪い、人としての誇りや尊厳までをも奪い取っていく。

 その現実を目の当たりにしたとき、大きなショックと言いようのない怒りを覚えました。

  「借りたものは返すのが当たり前」「甘えるな」
 日々、相談と救済活動をしていると、そのような言葉をいただくことがあります。
 しかし、現実に目の前にいる相談者は、おそらく、誰よりも努力を続けてきた方であると感じる場合がほとんどです。

 「よくここまで頑張ってきましたね。もう十分ですよ」と言って救済方法を示しても、簡単には乗らずに、さらに無理を続けようとします。

 誰よりも、自己責任の意識が強すぎて、「助けて」と言えないのです。
 奨学金という名のローンの返済に苦しむ人は、自分の力ではどうしようもない理由で、社会の仕組みが生み出した被害者です。

 その解決は、「事実」を正しく直視し、制度を変えていく以外にはありません。

 私たちは、このような視点から、現場で起こっている「事実」をできる限り明らかにするよう心がけました。


 調査・取材し続けたジャーナリストの視点から、具体的な相談と救済活動の取り組みから、当事者・支援者としての問題への関わりから、今起こっていることをありのまま伝えて告発し、「事実」に基づく警告と提言をしています。

 これは、本書の最も優れた特徴であると自負しています。


  お金の心配をせずに思い切り学べるような当たり前の世の中を実現したい、学ぶために負わされた借金に苦しむ人が一刻も早く救済され、人として大切にされるようにしたい。そんな思いで、この本を作りました。
  本書によって、一人でも多くの市民にこの問題の実態を知っていただき、それが世論を喚起して、やがて真に学びと成長を支える制度実現への大きな流れとなることを、願ってやみません。

2013年10月       奨学金問題対策全国会議 事務局長 弁護士・岩重佳治